2016年3月11日金曜日

やさしいつなみ(2013)




自分が生まれ育った土地のことを思い出してしまう。

地震がしょっちゅうあるし、洪水もたくさん起こって、
泥水に膝まで浸かりながら集団下校していた。

町には怖い文字で書かれた「原発反対」の看板が沢山あり、
TVには「安心、安全」と明るいCMが流れていた。

怪しいヘリコプターが飛んでいったら
「原発の方に行ったな、テロだな」
と、ふざけて言う大人もいた。
ビクビクして教室の白いカーテンにくるまったのを覚えてる。

そういえば地震がある度に「発電所に異常はありません」
と市内アナウンスが流れていたな。

でもそれらは全部当たり前の、私たちの生活だった。
子供時代の思い出の一部だった。

この間実家に帰った時。夕飯は美味しいお鍋。
鍋敷きの代わりにバサッとテーブルに出された冊子が
「避難マニュアル」でビックリした。
「これって大事なんじゃないの?」と読んでみたら
内容が無くて更にビックリした。

被災地の、誰もいない街の写真を見るたびにどうしても
自分が生まれ育った土地のことを思い出してしまう。
3年前この絵を描いたとき、馬鹿みたいに純粋に、心から、
やさしいつなみがあればいいのにと思っていた。